雷四郎第二部 ～神泉の野望
コンコン。
失礼します。
案内役が教祖室のドアをノックし、深々とおじきをしながら開ける。
ドアが開くと正面に「月」の文字が書かれた大きな書道額を背にして小夜が座っている。
そして横にある応接席には上品そうな初老の男と肉感的な女が座っていた。
唇が薄い初老の男に対して少しめくれ上がった肉厚な唇の女はなんとも艶かしい雰囲気を醸し出している。
お兄様！お越し頂きありがとうございます！
小夜は雷四郎の姿を見るなり教祖席からドアのところに駆け寄り、雷四郎と抱擁を交わす。
初老の男と肉感的な女はその場で立ち上がり会釈をした。
あっ！お兄様！紹介致しますわ。
こちらは神泉さん。
今後「月の会」の顧問をして頂こうと思っているの。
妹君にはお世話になっております。神泉と申します。
神泉はそう言いながら右手を差し出す。
どうも。
雷四郎はその手を握り握手を交わす。
神泉の思考を読み取ろうとするが、深淵を覗いているように真っ暗だった。
ほう、そう言うことか…
雷四郎は心の中でつぶやく。
こちらは執事の観堂です。
心の中などおくびにも出さず、爽やかな青年を装い神泉に観堂を紹介する雷四郎。
よろしくお願いします。
神泉は観堂にも深々と頭を下げ握手を交わす。
隣は神泉さんの娘さんで、秘書をなさっている亜矢芽さん。
小夜は雷四郎に亜矢芽を紹介する。
一同は紹介が終わると着席した。
失礼します。
案内役が教祖室のドアをノックし、深々とおじきをしながら開ける。
ドアが開くと正面に「月」の文字が書かれた大きな書道額を背にして小夜が座っている。
そして横にある応接席には上品そうな初老の男と肉感的な女が座っていた。
唇が薄い初老の男に対して少しめくれ上がった肉厚な唇の女はなんとも艶かしい雰囲気を醸し出している。
お兄様！お越し頂きありがとうございます！
小夜は雷四郎の姿を見るなり教祖席からドアのところに駆け寄り、雷四郎と抱擁を交わす。
初老の男と肉感的な女はその場で立ち上がり会釈をした。
あっ！お兄様！紹介致しますわ。
こちらは神泉さん。
今後「月の会」の顧問をして頂こうと思っているの。
妹君にはお世話になっております。神泉と申します。
神泉はそう言いながら右手を差し出す。
どうも。
雷四郎はその手を握り握手を交わす。
神泉の思考を読み取ろうとするが、深淵を覗いているように真っ暗だった。
ほう、そう言うことか…
雷四郎は心の中でつぶやく。
こちらは執事の観堂です。
心の中などおくびにも出さず、爽やかな青年を装い神泉に観堂を紹介する雷四郎。
よろしくお願いします。
神泉は観堂にも深々と頭を下げ握手を交わす。
隣は神泉さんの娘さんで、秘書をなさっている亜矢芽さん。
小夜は雷四郎に亜矢芽を紹介する。
一同は紹介が終わると着席した。
さて小夜さんからご紹介して頂いたように今後私めが月の会の顧問をすることになりました。
神泉が話を切り出す。
顧問と言っても「月の会」の運営については全く関与しません。
苗字に「神」が入っているとは言え私は不神論者ですからな。
顧問をするのは「月の会」のサイドビジネス…企業経営の方です。
教祖様としてお忙しい毎日を過ごされている小夜さんから、
企業経営全般を任せて頂き、私が一手に引き受けます。
ご心配することはありません。
私もこう見えて、既にいくつかの企業を経営していますので。
ええ、知ってますよ。
神泉グループと言ったら最近急拡大していることで有名ですからね。
雷四郎が相槌を打つ。
ほう！ご存じでしたか！
ご存じでしたら話が早い。
私めが経営に参画した企業は皆業績が伸び発展している。
妹君の持っていらっしゃる企業もこれからどんどん大きくして行きます。
そこでお兄様が持っていらっしゃる企業も是非私めにお任せして頂ければと、
今日はわざわざお呼びだてした次第です。
うふふ、それとね。
私たち近々結婚しようと思うの。
その報告も兼ねて来て貰ったのよ。
そう言うと神泉の隣に座っていた小夜は、神泉の腕に自らの腕を絡めしなだれかかる。
そうか。
雷四郎は小夜の結婚報告を聞いても眉ひとつ動かさない。
神泉さん。
申し出には感謝しますが、私が経営している企業も今は業績がすこぶる良くてね。
あなたの手を煩わせる程ではありません。
そうですか、小夜さん…いえ小夜からあなたもそれは忙しいと聞いたものですから。
それにあなたは何か不安を抱えていらっしゃるようですし…
まあご本人が嫌がるものを無理にとは申しません。
気が変わったらいつでもご相談下さい。
小夜と結婚すれば私たちは家族ですので。
ええ、そうですね。
あっ！それと！
近々亜矢芽を雷四郎さんの元で使えさせようと思うのですが如何でしょうか？
亜矢芽さんを？
ええ、手前味噌ですが亜矢芽もこう見えて中々有能な秘書です。
お気に召さなければ突っ返して頂いても構いませんが、きっと気に入って貰えると思いますよ。
そうにこやかに話す神泉。
そうですか、断る理由もないので構いませんが…
それは良かった！
亜矢芽！お兄様の元でしっかり働くのだぞ！
はい、お父様。
ふつつかな者ですがよろしくお願い致します。
亜矢芽はそう言うとテーブルに三つ指をつき、深々とおじきをした。
神泉が話を切り出す。
顧問と言っても「月の会」の運営については全く関与しません。
苗字に「神」が入っているとは言え私は不神論者ですからな。
顧問をするのは「月の会」のサイドビジネス…企業経営の方です。
教祖様としてお忙しい毎日を過ごされている小夜さんから、
企業経営全般を任せて頂き、私が一手に引き受けます。
ご心配することはありません。
私もこう見えて、既にいくつかの企業を経営していますので。
ええ、知ってますよ。
神泉グループと言ったら最近急拡大していることで有名ですからね。
雷四郎が相槌を打つ。
ほう！ご存じでしたか！
ご存じでしたら話が早い。
私めが経営に参画した企業は皆業績が伸び発展している。
妹君の持っていらっしゃる企業もこれからどんどん大きくして行きます。
そこでお兄様が持っていらっしゃる企業も是非私めにお任せして頂ければと、
今日はわざわざお呼びだてした次第です。
うふふ、それとね。
私たち近々結婚しようと思うの。
その報告も兼ねて来て貰ったのよ。
そう言うと神泉の隣に座っていた小夜は、神泉の腕に自らの腕を絡めしなだれかかる。
そうか。
雷四郎は小夜の結婚報告を聞いても眉ひとつ動かさない。
神泉さん。
申し出には感謝しますが、私が経営している企業も今は業績がすこぶる良くてね。
あなたの手を煩わせる程ではありません。
そうですか、小夜さん…いえ小夜からあなたもそれは忙しいと聞いたものですから。
それにあなたは何か不安を抱えていらっしゃるようですし…
まあご本人が嫌がるものを無理にとは申しません。
気が変わったらいつでもご相談下さい。
小夜と結婚すれば私たちは家族ですので。
ええ、そうですね。
あっ！それと！
近々亜矢芽を雷四郎さんの元で使えさせようと思うのですが如何でしょうか？
亜矢芽さんを？
ええ、手前味噌ですが亜矢芽もこう見えて中々有能な秘書です。
お気に召さなければ突っ返して頂いても構いませんが、きっと気に入って貰えると思いますよ。
そうにこやかに話す神泉。
そうですか、断る理由もないので構いませんが…
それは良かった！
亜矢芽！お兄様の元でしっかり働くのだぞ！
はい、お父様。
ふつつかな者ですがよろしくお願い致します。
亜矢芽はそう言うとテーブルに三つ指をつき、深々とおじきをした。
