静乃と新治第六部 ～プロローグ
パリかぁ。
ふふふ、新婚旅行以来ね。
飛行機の窓から目を離した三浦静乃はそう言うと、
隣に座る夫…新治の腕に手を絡め、肩に首を持たれてそうつぶやいた。
静乃は石橋龍之介率いる石橋コンツェルンのメイドで、
普段は石橋龍之介の身の回りの世話をし、性欲を満たすのが仕事である。
只、石橋家のメイドにはもうひとつの顔があった。
極秘に兵器開発、売買を手掛ける石橋コンツェルンの総帥でもある龍之介を守る私設護衛部隊の側面である。
部隊は各人の特性によって、大きく３隊に分かれている。
格闘や近距離での戦闘を得意とする近距離部隊。
ライフルやロケット弾の攻撃を得意とする長距離部隊。
策敵や作戦立案、サポートを得意とする諜報部隊。
３０人ほどいるメイドは殆どがそのいずれかに属していた。
静乃は近距離部隊のリーダー兼、Ａチームの隊長。
Ａチームには静乃の他に、爆発物のスペシャリスト芽衣と、ロシアンマフィアから鞍替えした、
暗殺技のスペシャリスト、双子のサーシャとナターシャが所属している。
今回パリに訪れるのも完全なオフではなく、パリにあるボルドール財団との親睦研修に参加するためだ。
と言っても半分は報奨旅行的な意味合いなので皆家族同伴である。
パリ行きの飛行機には静乃の夫で石橋家の運転手である新治の他に、芽衣の夫である石橋家の
ハウスキーパーである純と、サーシャとナターシャが石橋研究所所長の四谷博士から譲り受けた、
四谷博士の長男隼人のクローンであるナナと十三を連れて来ていた。
半年前隼人が反乱に失敗し自殺した後、龍之介と共に四谷博士の元を訪ねた際、
顔を見ると辛くなるとのことで、サーシャとナターシャが連れ帰って来たのである。
「欲」を持たないクローン人間の穏和さと従順さを、サーシャとナターシャはいたく気に入っていた。
飛行機に乗っている間も、ナターシャとサーシャはまるで新婚夫婦のように
幾度となくナナと十三に頬ずりし、キスを交わしていた。
ボンジュール！シズノ！
ボンジュール！フランソワ！
空港に着くと金髪の女性たちが出迎えに訪れていた。
ふふふ、新婚旅行以来ね。
飛行機の窓から目を離した三浦静乃はそう言うと、
隣に座る夫…新治の腕に手を絡め、肩に首を持たれてそうつぶやいた。
静乃は石橋龍之介率いる石橋コンツェルンのメイドで、
普段は石橋龍之介の身の回りの世話をし、性欲を満たすのが仕事である。
只、石橋家のメイドにはもうひとつの顔があった。
極秘に兵器開発、売買を手掛ける石橋コンツェルンの総帥でもある龍之介を守る私設護衛部隊の側面である。
部隊は各人の特性によって、大きく３隊に分かれている。
格闘や近距離での戦闘を得意とする近距離部隊。
ライフルやロケット弾の攻撃を得意とする長距離部隊。
策敵や作戦立案、サポートを得意とする諜報部隊。
３０人ほどいるメイドは殆どがそのいずれかに属していた。
静乃は近距離部隊のリーダー兼、Ａチームの隊長。
Ａチームには静乃の他に、爆発物のスペシャリスト芽衣と、ロシアンマフィアから鞍替えした、
暗殺技のスペシャリスト、双子のサーシャとナターシャが所属している。
今回パリに訪れるのも完全なオフではなく、パリにあるボルドール財団との親睦研修に参加するためだ。
と言っても半分は報奨旅行的な意味合いなので皆家族同伴である。
パリ行きの飛行機には静乃の夫で石橋家の運転手である新治の他に、芽衣の夫である石橋家の
ハウスキーパーである純と、サーシャとナターシャが石橋研究所所長の四谷博士から譲り受けた、
四谷博士の長男隼人のクローンであるナナと十三を連れて来ていた。
半年前隼人が反乱に失敗し自殺した後、龍之介と共に四谷博士の元を訪ねた際、
顔を見ると辛くなるとのことで、サーシャとナターシャが連れ帰って来たのである。
「欲」を持たないクローン人間の穏和さと従順さを、サーシャとナターシャはいたく気に入っていた。
飛行機に乗っている間も、ナターシャとサーシャはまるで新婚夫婦のように
幾度となくナナと十三に頬ずりし、キスを交わしていた。
ボンジュール！シズノ！
ボンジュール！フランソワ！
空港に着くと金髪の女性たちが出迎えに訪れていた。
ロシア人と比べてフランス人は背格好が日本人に近い。
静乃と抱擁をしているフランソワと呼ばれた女性を見て新治はそう思っていた。
… … …
静乃の耳元で何か語りかけたフランソワは、皆の方を向き、顎と指で「こっちだ」と合図してきびすを返す。
皆、フランソワの後に続く。
静乃さん、彼女何て言ってたの？
歩きながら新治が尋ねる。
ん？ああ、さっき？
売春婦の男はやっぱり尻が軽いのか？
ですって。
え～！
静乃さん仲が良いんじゃないの？
別に仲良くはないわよ。
というかよく知らないわ。
御主人様に付いてこちらに来た時、何度か会ったくらいだもの。
そうなんだ。
でもなんか嫌な感じだね。
うん。
彼女たちはボスと関係を持ったりはしていないみたいだから、私たちのような女は気に喰わないのかもね。
そう言うと静乃はさして気に止める様子もなく迎えのリムジンに乗り込んだ。
シズーノ！
ムッシュボルドール。
お久しぶりでございます。
今回はお招きありがとうございます。
ボルドール邸は石橋家に負けず劣らずの大きさで、広大な庭園には猟犬も放されていた。
大広間に通された静乃たち一行の前に現れたボルドール財閥の総帥ミシェル・ド・ボルドールは
見た目、恰幅良い好好爺で、とても武器売買を扱っているとは思えない。
龍之介は元気かね？
はい、とてもお元気で私たちがもて余す程ですわ。
わはは！そうか！
それは盛んで良いな！
性欲は力の源。
ナポレオン然り、フランス人は特にそういうことを重んじる。
私も見習わなくてはな！
ふふふ、見習って下さいませ。
何なら私たちがお相手しますわよ。
おお！それは嬉しいな！
…オホン！
その時であった。
ボルドール氏の横で控えていたフランソワが咳払いをする。
あ～！冗談だ。
お前は優秀な兵士だが、真面目過ぎるのがタマに傷だな。
少しは静乃を見習ったらどうた？
お言葉ですが見習うところなどないかと。
そうか？
…うん、そうだな。
静乃！今日は君たちのために盛大なパーティーを準備してある。
明日から研修だが、今日はゆっくりしていってくれ。
ボルドール氏はそう言うと、静乃と軽く抱擁を交わし、執事に静乃たちを部屋まで案内するように命じる。
静乃たちは執事の後に続いて、ボルドールの部屋を後にした。
静乃と抱擁をしているフランソワと呼ばれた女性を見て新治はそう思っていた。
… … …
静乃の耳元で何か語りかけたフランソワは、皆の方を向き、顎と指で「こっちだ」と合図してきびすを返す。
皆、フランソワの後に続く。
静乃さん、彼女何て言ってたの？
歩きながら新治が尋ねる。
ん？ああ、さっき？
売春婦の男はやっぱり尻が軽いのか？
ですって。
え～！
静乃さん仲が良いんじゃないの？
別に仲良くはないわよ。
というかよく知らないわ。
御主人様に付いてこちらに来た時、何度か会ったくらいだもの。
そうなんだ。
でもなんか嫌な感じだね。
うん。
彼女たちはボスと関係を持ったりはしていないみたいだから、私たちのような女は気に喰わないのかもね。
そう言うと静乃はさして気に止める様子もなく迎えのリムジンに乗り込んだ。
シズーノ！
ムッシュボルドール。
お久しぶりでございます。
今回はお招きありがとうございます。
ボルドール邸は石橋家に負けず劣らずの大きさで、広大な庭園には猟犬も放されていた。
大広間に通された静乃たち一行の前に現れたボルドール財閥の総帥ミシェル・ド・ボルドールは
見た目、恰幅良い好好爺で、とても武器売買を扱っているとは思えない。
龍之介は元気かね？
はい、とてもお元気で私たちがもて余す程ですわ。
わはは！そうか！
それは盛んで良いな！
性欲は力の源。
ナポレオン然り、フランス人は特にそういうことを重んじる。
私も見習わなくてはな！
ふふふ、見習って下さいませ。
何なら私たちがお相手しますわよ。
おお！それは嬉しいな！
…オホン！
その時であった。
ボルドール氏の横で控えていたフランソワが咳払いをする。
あ～！冗談だ。
お前は優秀な兵士だが、真面目過ぎるのがタマに傷だな。
少しは静乃を見習ったらどうた？
お言葉ですが見習うところなどないかと。
そうか？
…うん、そうだな。
静乃！今日は君たちのために盛大なパーティーを準備してある。
明日から研修だが、今日はゆっくりしていってくれ。
ボルドール氏はそう言うと、静乃と軽く抱擁を交わし、執事に静乃たちを部屋まで案内するように命じる。
静乃たちは執事の後に続いて、ボルドールの部屋を後にした。
